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Only you……
第6章 明 3
「ちょっと、りんさん! もう止めた方が……」
オレが半べそかきながら制止をしても、りんさんはお酒を飲むスピードを一向に緩めなかった。オレが必死に飛びついてコップをもぎ取ろうとすれば、「にゃによ! まら飲むんらからっ」と呂律の回らない状態で言い返された。
「だって、麻都が止めろって……」
泣きたくなるのを何とか堪え、オレはりんさんともみ合っていた。
知らないうちにオレは眠っていた。そして目が覚めたときには、既にベッドの上で朝を迎えていたのだった。まだ早朝だった。
「……んっ」
オレにしては珍しいくらいの早起きで、隣を見れば麻都が虚空を見つめていた。
そしてオレが起きたことに気付いた麻都がオレを見て微笑んだ。
「おはよ。早いな」
「……うん」
オレは昨日のことは夢かと思った。大変だったけど、楽しかったのに、夢かと思った。
「どうした?」
変な顔をしているオレに麻都が尋ねる。オレは控えめに「皆は……?」と言った。
「あぁ、夜中に透真が引き取りに来て、持って帰ってったよ」
「と、うま?」
聞いた事のない名前が出てきて、オレは首を傾げた。
「おっさんの秘書兼恋人。東 透真」
「あ、前に来てくれた……?」
オレは倉庫での一件を思い出し、ぽんと手を叩いた。
あの時、死にそうだったオレと負傷した麻都を守ってくれた人――あれが透真さんらしい。
「なんかおっさんが家出る前に、透真に俺に呼ばれた~って電話したらしくてさ」
その様子を想像して、ププっと笑う。つられてオレも笑顔になる。
麻都が勢いよくベッドから起き上がった。その反動でベッドが揺れる。
「さって、そろそろ支度しなくては」
オレも手伝おうと思って起き上がろうとしたが、麻都がくしゃっと髪を撫ぜて「寝てなさい」と言った。仕方無しにオレはもう一度横になる。
「家出る前にもっかい来るわ」
そう言い残し、ベッドルームを出て行った。