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僕たちはこの方法しか知らない(BL短編集)
第2章 最後のチャンス
「はい、マヨネーズ」
カシャ――。
「ちょ、まじつまんないギャグとか入れんなよー」
カシャ――。
「あ、山村、後で美白にデコって送ってね!」
「はあ? てめーでやれよー」
卒業式。この中の何人かとは、きっともう二度と会わない。そこそこクラスの仲はよくて、女子の派閥も大きな争いごともなく穏やかで、それでいて騒がしい日々だった。
山村 和幸(やまむら かずゆき)は最後の記念にと色紙の記入と写真を撮りまくっていた。この写真交換を期に連絡先を交換しあったクラスメートもいた。和幸は特に意識せずに、教える。どうせ今日で最後だ。写真を送って、返信が来て、それに返して、何通かのやり取りをした後はもう連絡をすることもない。箪笥の肥やしならぬ、アドレス帳の肥やしになっていくだけだ。
クラスのムードメーカー的存在の和幸の周りは男女問わず人が集まっていた。それは普段からではあるが、今日は最終日ということもあり普段は近寄ってこないタイプの人間もちらほら混ざってる。別にかまわない。最後だから。ここで運命の出会いとか、そういうのは期待してないから。
卒業アルバムの最終ページ。寄せ書き用のスペースはほぼクラス全員分集まった。ほんの少し別のクラスのやつも混ざってるがかまわない。大事なことはそんなことじゃない。
大事なことは、今日が最後のチャンスだということ。
寄せ書きにまだメッセージの記載がない人物、彼の姿を、仲間と談笑しているフリをして目だけで探す。さっきまでは自分の席で女子に囲まれていたのに、今はクラス内のどこにも見当たらなかった。
最後のホームルームはとっくに終わってる。ここにいるのは最後の高校生活を惜しむ者たちだけ。もしかしたら、彼――高城 啓斗(たかぎ けいと)――は帰ってしまったのではないか。和幸の額には薄っすら冷や汗が浮かぶ。
今まで三年間ずっと和幸と啓斗はクラスが一緒だった。なのにほとんど口を交わしたことはない。和幸の周りには騒ぐのが好きな男子とチャラチャラした女子がいて、啓斗の周りには遠巻きに熱視線を送る女子の群れがあった。
勉強ができて、スポーツができて、優しくて、イケメンで、それでモテなきゃこの世の誰がモテるのか。