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僕たちはこの方法しか知らない(BL短編集)
第1章 Like A Cat

冷蔵庫を開けてもたいしたものは入ってなかった。そういえばしばらく買い物に行っていない。仕方なく俺は、常備しているインスタントラーメンを作ることにする。
俺自身は食い物にこだわりはないが、ヤツには少しでも栄養のあるものを食わせてやりたかった。空に近い冷蔵庫から野菜の残りを出して一緒に調理する。卵も1つだけあったのでヤツの方に入れてやった。
「ほら、できたぞ。出てこい」
「わーい」
素直に子供のような声を上げて寝室から出てくる。その動作は声とは裏腹にだるそうだった。俺はヤツのほうへ寄り腰に手を添えてやる。
「つーか、前にも言ったけど、服を着ろ」
「んー? なんでえ?」
ヤツは俺に擦り寄って甘えた。俺は頭をわしわしと乱暴に撫でてやる。嬉しそうに笑った顔がかわいくて仕方ない。
ヤツには服を着るという習慣があまりないようだった。着ろを言って与えると身に付け出すが、放っておくと全裸で外にも出そうないきおいだ。服を着ることに対して素直に「なんで」と聞かれても「それが普通だから」とは答えられなかった。
「また、襲いたくなるから」
適当にもっともらしいことを言っておく。
「いいよ。オレ、アンタが望むなら。だって今はアンタがオレの飼い主だし」
「俺はそんなつもりはない」
ヤツはまだ、飼育されているつもりだ。主人が代わっただけだとでも思っているのか。妖艶に誘ってくるのならまだしも、子供らしい素直な笑顔でその台詞を吐かれるとどうしたらいいかわからなくなる。
「え……。オレのこと捨てる予定なの……?」
急に目を泳がせて体をこわばらせる。俺にすがっていた手にかすかに力がこもった。全力でしがみついてこないのは、ヤツは自分にそんな権利はないと思っているからだろう。
「捨てない。つーか見捨てない」
うつむいてしまっていたヤツの顎に手をかけ上向かせると、俺は優しく口付けた。やわらかくて甘い感覚。脳の中心が一瞬ぼぅっとなる。
「俺はお前の飼い主じゃなくて、恋人になりたい」
「こ、いびと……?」

