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僕たちはこの方法しか知らない(BL短編集)
第1章 Like A Cat

その衝撃でヤツは俺の口内へ精を放ち、裂けて血を流す穴はキュウキュウと指を食んでいた。
指を抜き取るとヤツのムスコを丁寧に舐めてきれいにしてやり、ついでに出血しているアナルも舐めてやった。唾液でもつけておいた方が少しは治りがいいだろう。
「ご、ごめんなさいッ! ご主人様の口に……オレ、オレ……」
快感の余韻に浸るヒマもないほど慌てて起き上がると、ヤツは俺に頭を下げた。先ほどとは違う意味でほとんど泣きそうな顔をしていた。
「旨かったぜ」
髪を掴むようにして頭を上げさせるとヤツの顔は涙に濡れていた。おまけに鼻水まで見え隠れしている。俺は少し後悔した。まだ早かったかと。
――泣かせてごめんな。
両腕でそっとヤツを抱きしめベッドの上に倒れる。振動で何度がマットレスが揺れた。
「オ、オレもします。ご主人様の――」
「必要ない」
イカせてやりたい、かわいく悶える姿を見たいという欲求はあったが、セックスしたいという欲求はなかった。ヤツの精液を搾り出した今、俺は妙に満たされた気持ちで腕の中で暴れる小動物を抱えている。
「で、でも」
「うるさい。お前の鳴き声を聞いて今日は満足したんだよ。あとは大人しく俺に抱かれてろ」
「……は、い」
納得してないような不安そうな声だったが、ヤツは大人しくなった。そして少ししてから、いつものように俺の胸に擦り寄ってくる。くすぐったいがやめさせる気はさらさらない。そういう仕草が愛おしいからだ。
セックス最中の妙に慣れたヤツよりも、普段の素直で子供っぽいヤツが好きだ。作りこまれた行動ではなく、ヤツの感情がこもっているから。
朝、仕事へ行く支度をしていたら携帯が鳴った。別に珍しいことではない。誰だろうと思い手に取ったが表示されていたのは”非通知”の文字だった。
なぜだかわからない。普段なら無視を決め込むのに、今日に限ってなぜか通話のボタンを押した。
「もしもし」
ぶっきらぼうに電話口へ声をかける。
だが、電話の向こうからはなんの返答もなかった。それどころか、物音ひとつ聞こえてこない。ただかすかに人の気配がするので電話口に誰かがいる気はする。

