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Only you……番外編
第6章 目眩
「僕はそんなに卑怯な人間ではない、と自負している」
私と向かいにしゃがみ、書類を拾うのを手伝いながら、透真が言った。
「それを駆け引きのネタにもしない。このことは誰にも言わない」
強い視線を感じ、顔を上げられない。
「約束しよう」
そう言って小指を出してきた。私が疑問符を頭上に浮かべると、「指きりだ」と言って、ニッっと笑った。その笑顔が予想以上に可愛く、幼さを感じさせた。
「僕は別にお前を蹴落としたいわけじゃない。ただ、父の会社が乗っ取られてゆくのに我慢できないだけ」
「乗っ取るわけではないっ」
僕は顔を上げ、慌てて否定した。
「分かってる。でも、そう感じてしまうんだ」
そして寂しそうな表情を見た。
そうだった。透真は実の父親を亡くしたばかりだったのだ。その傷が癒えるまもなく、次の瞬間には会社を取られようとしているのだ。
「社まで送ろう。途中で倒れられては迷惑だから」
そう言って立ち上がった。