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Only you……番外編
第6章 目眩
「……んっ」
目を開けると、その先は真っ白だった。死んだのかと思った。特に怖くも、痛くもなかった。こんなもんか、と諦めた瞬間――。
「大丈夫か?!」
聞いたことのある声がした。
――? 誰?
「おい! 起きたのか?!」
ゆっくりと酸素が全身をまわり、視力が回復してゆく。すると目に入ってきたのは、東 透真その人だった。
「まだ苦しいか?! 救急車呼んだほうがいいのか?! 薬とかは??!」
耳元で何度も、透真は叫んだ。聴力も回復し。生きている感覚が戻ってきた。そうすると、私がいるのは透真の膝の上だということが分かった。あお向けに寝た状態で、顎を上に向けた気道確保の体勢。
――透真が助けてくれたのか。
「おい、返事しろよ!」
私はむくっと起き上がり、ため息を一つつくと立ち上がった。その瞬間目眩が襲ってきたが、倒れないようにぐっと耐えた。
「……にも……な」
「え……?」
私の言葉が聞こえなかったのか、透真は聞き返してきた。
振り返らずにもう一度同じことを繰り返す。
「誰にも言うな」
涙が零れそうで、振り返ることができなかった。まだ生きている嬉しさと、また意識を取り戻してしまった恐怖。
「どこか、悪いのか?」
透真が立ち上がる気配に、私は身を縮めた。カツカツと近寄ってくる。
「……」
「返事くらいしろよ」
冷たい言葉――ではなかった。そのことに私は逆に怯えた。
「し、心臓」
「?」
「心臓が悪いんだ。生まれつき……」
相槌などは挟まず、先を促すようだった。
「良かっただろ? 社長になるためのライバルが病気持ちだと、有利になるよな」
無理して笑ってみせる。私の乾いた笑い声だけが室内に響いた。
「書類、ばら撒いてすまん」
しゃがみ込んで1枚1枚拾い始める。