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Only you……番外編
第7章 薬
車の中は、重苦しかった。
私は、東 透真の車に乗って、会社へ帰る真っ最中。突然倒れ、意識を失った私を気遣って――いや、助けてやったんだという恩を着せたいだけかもしれないが――透真は私を社まで送ることを申し出た。もちろん初めは断った。いくら命を助けられたとはいえ、透真は私を嫌っているに違いない。そんな人物と狭い空間で2人きりなんて、とても絶えられない。沈黙が苦しかった。
心臓がチクチクした。
ピピピピッ――。
突然鳴りだした携帯のアラームに透真が驚き、車が左右に振れた。
薬の時間だった。一秒でも長く生きるための、延命薬。錠剤3つと粉が2つ。うち1つは胃薬だったりするが。
「何かの時間か?」
真っ直ぐに前を向いたまま、透真は私に尋ねた。私が黙ったままでいると赤信号で止まった時にちらりと睨んできた。
「く、薬の……」
まるで蛇に睨まれた蛙状態だ。もちろん蛇が透真で、蛙が私。
「水、持ってるのか?」
私が力なく首を振ると、透真はコンビニの駐車場へと車を入れた。そして無言で出て行き、戻ってきたときにはミネラルウォーターを持っていた。それを押し付けるように私へと差し出す。
「……どうも」
私は鞄から薬を取り出し、全ての薬を1つの粉薬の袋の中へ入れた。青い粉と白い粉が混ざり合い、水色になる。
「そんなに沢山あるのか」
「まぁ……」
水で押し流すとため息をついた。
――今の薬で、どのくらい延命できたんだろう。
それはとても恐ろしいこと。後自分の命はどれくらい残っているのだろう。この薬を飲んだら死なない、というわけではない。この薬を飲まなかったからといって、死ぬというわけでもない。結局人間は最後には死ぬわけだから、みんな同じかもしれない。それでも明日尽きるかもしれない私の命の残りを計算することは、恐ろしいことだった。
透真はまた車を走らせる。しかし、いっこうに渋滞にははまらなかった。その理由は、私にはさっぱり分からない。ただ、よく曲がるなぁとは思っていた。
私は、東 透真の車に乗って、会社へ帰る真っ最中。突然倒れ、意識を失った私を気遣って――いや、助けてやったんだという恩を着せたいだけかもしれないが――透真は私を社まで送ることを申し出た。もちろん初めは断った。いくら命を助けられたとはいえ、透真は私を嫌っているに違いない。そんな人物と狭い空間で2人きりなんて、とても絶えられない。沈黙が苦しかった。
心臓がチクチクした。
ピピピピッ――。
突然鳴りだした携帯のアラームに透真が驚き、車が左右に振れた。
薬の時間だった。一秒でも長く生きるための、延命薬。錠剤3つと粉が2つ。うち1つは胃薬だったりするが。
「何かの時間か?」
真っ直ぐに前を向いたまま、透真は私に尋ねた。私が黙ったままでいると赤信号で止まった時にちらりと睨んできた。
「く、薬の……」
まるで蛇に睨まれた蛙状態だ。もちろん蛇が透真で、蛙が私。
「水、持ってるのか?」
私が力なく首を振ると、透真はコンビニの駐車場へと車を入れた。そして無言で出て行き、戻ってきたときにはミネラルウォーターを持っていた。それを押し付けるように私へと差し出す。
「……どうも」
私は鞄から薬を取り出し、全ての薬を1つの粉薬の袋の中へ入れた。青い粉と白い粉が混ざり合い、水色になる。
「そんなに沢山あるのか」
「まぁ……」
水で押し流すとため息をついた。
――今の薬で、どのくらい延命できたんだろう。
それはとても恐ろしいこと。後自分の命はどれくらい残っているのだろう。この薬を飲んだら死なない、というわけではない。この薬を飲まなかったからといって、死ぬというわけでもない。結局人間は最後には死ぬわけだから、みんな同じかもしれない。それでも明日尽きるかもしれない私の命の残りを計算することは、恐ろしいことだった。
透真はまた車を走らせる。しかし、いっこうに渋滞にははまらなかった。その理由は、私にはさっぱり分からない。ただ、よく曲がるなぁとは思っていた。