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Only you……番外編
第8章 発作
あれから透真は、私が向こうへ行くよりも先に、こちらへやって来るようになった。たまたまなのか、意識してなのかは分からない。行く手間が省けるのはいいのだが、なんだか自分が何の役にも立たないようで、悲しくなった。
そして今日も、例外なく透真は来た。――といっても、私はその姿を見たわけではない。来たという話を聞いただけ。
ルルルルル――。
机の上の電話が、突然唸りだした。私は慌てて手を伸ばし、それを大人しくさせる。
「もしもし?」
『貴正、私だ。部屋まで来てくれ』
用件を言うと、伯父は返事を聞かず早々に電話を切ってしまった。何か急いでいたようにも感じる。
私はすっくと立ち上がり、部屋を出た。
コンコン――。
「失礼します」
ノックをして呼ばれた先である社長室へと足を進める。中には透真と呼び出した張本人の伯父がいた。私は透真の隣へと立つ。
「わざわざ足を運ばせてしまって、すまないな」
「いいえ」
私はすぐに返事をしたが、透真はむすっと俯いたままだった。
伯父は気にした様子も無く、ゆったりと腰を下ろした。
「2人に大切な話があるのだ。今後の社運を決める要素の1つになるだろう」
私はごくりと唾を飲み込む。
透真は小さくため息を漏らした。
伯父は私たちの顔を交互に見ると、椅子へ一旦座りなおした。姿勢を整えるためだ。
「次期社長は、前々から言っていたように、貴正、お前だ」
伯父が私をじっと見詰めるのと同時に、透真は伯父をキッと睨んだ。恐ろしいくらいに鋭い視線だった。まるで射抜かれてしまいそうなほどに。
「そして透真くん、君には貴正のサポートをしてもらいたい」
視線を透真に移し、言った。
透真は訝しげな表情を見せる。予想外の話だったのだろう。
「……どういう意味ですか」
それは私の心をも代弁したような質問だった。サポートとは、具体的にどのようなことなのか。
「具体的に言うとだな、」
私も透真も、かすかに身を乗り出した。
しんと静まる。
空気の気配さえも感じるほどに、気を張り詰めさせた。
伯父の言葉を待つ。
「透真くんに、貴正の秘書をやってもらいたい」
言葉の意味を一瞬で理解することは無理だった。
――……なんだって?