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Only you……番外編
第9章 見舞い

窓の外は冷たい風がひゅーひゅー音を立てながら吹いていた。まるで私の心の中のよう。誰からも必要とされない、そんな役立たずな私の心の中のよう。

 コンコン――。

首をくるりとドアの方へ向ける。もう医者が巡回に来る時間なのかと思ったが、それにはまだ早かった。

ドアの奥から現れたのは、伯父だった。手には果物の盛り合わせ。

「調子はどうだ?」

そばの椅子に腰を下ろすと、そう尋ねてきた。

「すみません。こんな時に」

私は申し訳なさでいっぱいだった。合併という忙しい時期に入院なんて。おまけに私は副社長という重要なポストに収まっているというのに。

伯父はため息をつくと私を慰めるように肩に手を置いてきた。

「貴正……謝る必要はないんだ。私が無理をさせすぎたのかもしれない」

私は顔を上げた。伯父のせいではないのだと、否定をしようとした。――がそれよりも先に伯父が再び口を開いた。

「社長になるのは苦痛かね?」

優しい微笑みを浮かべて伯父は尋ねる。

私は首を縦にも横にも振ることができずに、ただ俯いていた。

「私は意地でお前を社長にしようとしているのではない。貴正の力はそれに見合うだけあるのだ。今まで人1倍努力してきたじゃないか。不利な環境だったにもかかわらず、頑張ってきたじゃないか」

言葉は優しく胸に響いた。それでも頷くとこはできなかった。心のどこかで、伯父が私に同情しているのではないかと思ってしまう。

「お前に是非、任せたいのだ」

“是非”の部分に力を込め、それを言い終えると伯父は帰っていった。こんな時間に見舞いに来てくれること自体、無理をしているのだ。忙しいのにわざわざ……。


そしてまた、窓の外を眺める。日差しは暖かいのに、私の心は一向に温まらなかった。
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