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Only you……番外編
第10章 片割れ

出社すると社員たちに次々と声をかけられ、大丈夫かと心配された。私はそのたびに笑って大丈夫だと答えた。そしてその社員たちは皆、私の後ろにいる透真を見て一様に驚き、一礼をして逃げていった。なんだか透真を恐れているようだった。出会ったばかりの私のように。
副社長である私のために当てられた部屋は、掃除嫌いの私のせいで随分と汚れていたはずだった。机の上には資料の山が出来、いつもそれを掻き分けて仕事をしていた。
それが今は――。
「あ、あれ?」
今までの惨状はどこへやら、すっかり片付いていた。おまけに見知らぬ家具まで増えていて。
驚きのあまり、透真を見ると得意げに微笑んでいた。
「あまりに悲惨な状態だったので、僕が片付けておきました」
木製の机に触れてみる。今までだったら埃が手にくっついてきたはずなのに、ピカピカと輝いたままだった。すこしも曇っていない。
「資料の山はそっちの本棚に、ジャンル分けして入れました」
指差された方を見ると、見たことの無い本棚に、資料たちが綺麗に収まっていた。
いつまでも唖然としている私に透真は声をかけた。
「さぁ、仕事を始めましょう」

