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Only you……番外編
第10章 片割れ

私がいない間、透真が色々やっておいてくれたおかげで、随分と作業は楽だった。資料に目を通したり、研究中の新車種の視察など比較的簡単なことばかりで、透真の努力には頭が下がる。

私がそれを素直に誉めれば、透真は「副社長のためなら」と言って笑った。

私は透真が“副社長”と言うたびに、妙に胸が高鳴った。くすぐったい感じがする。


初めこそ社員たちは透真を警戒していたが、持ち前の明るさと細かい心遣いで、いつ間にか透真は会社に馴染みきっていた。

話し掛ければにこにこと対応する、モデル並のスタイルの透真は、すぐに女性社員の間で人気がでた。各イベント毎にプレゼントを貰ったりして困ったような顔をしながらも、まんざらではないようだった。

私には、それが何だか気に入らなかった。



 ルルルル――。

電話の音が響いた。

私は手を伸ばしたが、それより先に透真が受話器を上げた。

「はい。はい、分かりました。すぐに行きます」

ガチャリと受話器を置くと、透真は立ち上がった。

「社長がお呼びなので、ちょっと行ってきます」

「あぁ」

ぱたぱたという足音が廊下から聞こえ、それはだんだんと小さくなっていった。



透真と組むようになって、私の仕事は幾分楽になった。そのおかげか否かは分からないが、あれから私は発作を起こさずにすんでいる。

まぁ、次が最期なのだから、発作が起きていれば今ここに私は存在しないが。


もう既に、前の発作から半年が経とうとしていた。
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