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Only you……番外編
第12章 最悪だったあの日の午後

「……」
無言で会社を見上げる。馬鹿みたいに大きい。それが第一印象だった。今はここが何かの収容所のようにさえ見える。
窓口で社長室は何階かと尋ねると、「約束はされてますか?」と聞かれた。受付嬢が電話で社長に確認すると、「15階になります」とようやく答えた。
私は軽く会釈してエレベーターに乗り込んだ。
溜息をつく。
――どうしてこんなことになんたのだろう?
ポーン――。
私の心とは裏腹に、軽快な音が鳴り響いた。
重い足を引きずるようにエレベーターを降り、社長室の前に仁王立ちした。
「はぁ……」
もう一度大きく溜息をつくと、目の前の大きなドアをガンガンノックした。
中から「はーい」という間抜けな声が聞こえたので、中へと踏み入った。
中には細身で色白の男が高そうな椅子にどっしりと座っていた。その傍らにはモデルのような整った顔立ちの男が静かに立っていた。
「お電話いただいた渥美 りん(あつみ りん)です」
ぺこりと礼をする。
「まぁ楽にしなさい。そこにかけるといい」
そう椅子を勧められたので、もう一度礼をして席に着いた。すると社長と思われる色白の男が私の向かいの席に腰を下ろした。
「私が社長の佐伯 貴正、で、こっちが秘書の東 透真(あずま とうま)だ」
透真と呼ばれた男が「よろしく」と頭を下げた。
「仕事の内容だが、りんくん、君には副社長の秘書をしてもらう」
「はい」
私は頷きながら返事を返す。
「しかしな、副社長は大学生なのだよ」
「……え?」
私は耳を疑った。
――ダイガクセイ?
「今は主に学業に専念してもらっている。だから実質的には君は副社長の仕事をこなすことになる」
頭がぼーっとしてくる。
もう社長の言っている言葉の意味が理解出来なくなっていた。
「ちょっと、りんさん!? しっかりしてください!!」
私は驚きとストレスで意識を手放し、椅子に沈んだ。

