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Only you……番外編
第2章 会議の後は

僕は東 透真、社長秘書をやっている。そして、会社を出れば、社長の恋人である。日本では未だに世間であまり理解されていないが、僕も社長も男同士――つまりは同性愛者だった。

「しゃ、社長!! 待って……」

僕は重たい鞄を持たされて、高級ホテルのロビーを小走りした。4メートルほど前に、社長――佐伯 貴正はいた。僕の方など見向きもせず、ずんずんと目的の場所まで歩いていく。目的の場所とは、このホテルの最上階にある高級バーだった。呆れるほど高い酒ばかりを集めたそのバーは、僕にとってももうなじみの店だった。

バーに着くとカウンター席にどかっと座り、「いつものっ!!」と怒鳴っていた。バーテンダーは無表情で「はい」と言うと、素早く“いつもの”を作り、貴正の前に出した。しかしそれは、僕が席にたどり着く前に、ほぼ一気飲みされてしまった。

「はぁ、社長ぅ~」

どんどんグラスを進める貴正に、僕は溜息混じりに声をかける。

貴正はいつも、いやなことがあるとこのバーで酒を浴びるように飲む。今日もそういう日だった。会議で遠まわしに馬鹿にされたのだ。相手は格下の会社の社長だったが、貴正が自分より若いのをいいことに僕の貴正を侮辱する。それまでご機嫌だった貴正も、それには心のなかで激怒したらしく、会議終了と同時に僕を引っ張ってここまで来た。

僕は貴正の髪をぽんぽんと撫でる。貴正はひゃひゃっと笑った。

――もう酔ってるし……。

貴正は酔うと笑い上戸になる。嫌なことは笑って忘れたいらしい。笑いながらいつも殴られる僕は、あまりスッキリしないけど。

酒に強くないくせに、やたらと飲みたがる。そして勢いよく飲んでは、すぐに酔いつぶれるのだった。今回も例外なく――。

「あはははははははぁ……ぐーぅ」

大爆笑しながら寝てしまった。

今日はデートじゃなかったっけ?

溜息をつくと会計を済ませ、そこを後にした。車まで運ぶのは相当の苦労だった。勘弁してくれよ……。
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