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Only you……番外編
第13章 次の日の妙な話

私がよくない話を耳にしたのは次の日だった。よくないといっても、それは私がそう感じるだけで、他の人間にとっては大したことではないかもしれない。とにかく、私にとっては嫌な話だった。
「あ、おはようございます」
若い社員が朝、私にぺこりと頭を下げた。私も挨拶を返す。この会社はやたらと挨拶が活発で、小中学校のようだった。
「渥美さんっていいですよね~」
そんなお気楽な感じで声をかけられ、私は首を傾げた。何のことだかさっぱり分からないからだ。
「だって、副社長の秘書なんですもんっ」
ポストの話かと思った。確かに、秘書というのはなかなか給料もいいだろう。私がそういい返すと、女性社員は「違いますよ~」と間の抜けた声で言った。
「副社長といつも一緒でいいなぁって言ってるんですぅ」
よく語尾を伸ばすなと思って聞いていた。
「副社長ってそんなに人気あるの?」
「もちろんっ!」
私の素朴な疑問に、その女の子は元気よく答えた。
「だってぇ、カッコイイじゃないですかぁ。それに仕事も出来るしィ、優しいしィ……」
どこがいいのかを必死に伝えようとしているのか、様々な部分をあげていった。私はその殆どを聞き流していた。
「それに一緒にいたら、抱いてもらえるかもしれないしっ」
女の子は顔を赤らめて「きゃっ言っちゃった」と笑った。
しかし、私は全く笑えない。
――だ……く?
――ハグのこと……?
「ここだけの話、副社長って上手いらしいですよ」
そっと耳打ちしてきた。
私は刺激の強さにまたもや倒れた。
意識を手放す寸前の耳には、「ぎゃぁぁぁ!!! 渥美さんがぁ」という叫び声が、右から入って左から出ていった。

