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Only you……番外編
第13章 次の日の妙な話

「ねぇ、りんってどんな字?」

「え?」

そんなどうでもいいようなことを尋ねられるとは思っていなかったので、私はとっさに間抜けな声が出てしまった。「ひらがなです」と答えると「ふーん」とさほど感心もないような返事が返ってきた。

「じゃあ、彼氏とかいんの?」

椅子に前後反対で腰掛け、背もたれに体を預ける体勢でまた尋ねてきた。

「い、ま、せんけど……」

なんとなく後半が小声になってゆく。副社長はまた「ふーん」と気のない返事をしてきた。

 ピロピロピロ――。

不意に携帯電話の着信メロディーが部屋の中に響き渡った。私のではない。私の携帯はつねに、音を発しないバイブレーダーのみの状態になっている。

副社長は片手で器用に携帯を開くと電話に出た。

「はぁい、もしもし? ……うん、おっけい……え、マジ? ……分かってるて」

そんな会話を繰り返していた。

大学の友だちかなにかだろうか。妙に砕けた喋り方だった。

「じゃあ、ばいばい」と言うと、副社長は電話を切った。

「したら俺帰るわ」

大量の荷物を持ってひらひらと手を振りながら、副社長は私1人を残し出ていった。私は唖然とその後姿を見送っていた。
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