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Only you……番外編
第14章 信じられない副社長

大学生兼副社長なんて高度なことをやるだけあって、実力や仕事のスピードは素晴らしかった。主に私が仕事をしていたのでそれほど負担にはなっていないだろうが、それでも遊び時間を削って働いているのかと思えばそうでもない。講義の後は友だちと遊びに行くのが常らしい。夜も近い夕方に出社しては、大量の資料を持って帰宅し、翌日にはその全てを終えて持ってくるのだ。
私にはとても真似できないし、真似ようとも思わない。
なぜこんな風にしてまで働くのか、なぜ大学生を副社長なんかにしたのか、私にはなぞのままだった。
副社長は日曜日も出社する。私はそれに合わせて、大抵日曜日にも出社する。
二人きりの狭い副社長室にも大分なれた。初めは気まずかったものの、お互いの性格がおぼろげながら見えてきた頃には、それなりに打ち解けていた。
「りん、これ事務に届けて。それとこっちは開発部に」
茶封筒を2つ渡され私は部屋を出た。
廊下ですれ違う社員たちと挨拶を交わすのにも慣れてきた。
この会社に毎日通っているうちに気づいたことは、社員の結束が固いということだ。それは中学校や高校のクラスのように、皆が打ち解けていた。
――まぁ、これだけ変わった会社にいれば、親しくもなるか……。
そんなように私自身を納得させていた。
副社長室に戻ると、副社長は机に突っ伏していた。具合が悪いのかと思って近寄ると、かすかな寝息が聞こえる。疲れているのだろう。学業と仕事の両立なんて尋常じゃない。
しかし、今は勤務時間。ということで、私は副社長の肩を揺すって起こす。
「副社長~今はお仕事の時間ですよっ」
揺すっても、揺すってもなかなか起きる気配を見せない。私はさらに激しく揺する。
「……んっ」
起きるのかと思ったが、寝返りをうっただけ。綺麗な寝顔が露になった。
――綺麗な顔……。
ついぼーっと見とれてしまう。
すると突然ガバっと起き上がった。
「うわっ!! やべぇ、寝てたっ」
副社長は乱れた髪を整えながら、私の方を向いた。
「起こしてくれたんだろう? 悪いな」
苦笑を浮かべる顔に、「いいえ、いつものことですから」と皮肉を言ってみたりすると、副社長は「すいません」と頭を下げた。

