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Only you……番外編
第14章 信じられない副社長

とある日の夕方。

私は受け付けに用事があったので、玄関まで顔を出した。ふと外を見れば、副社長の後姿が見えたので声をかけようと手を上げた――。

 パンッ――。

乾いた音が周辺に響いた。

私は驚き、思わず上げていた手を引っ込めた。

「あんたなんか最低よっ!!」

泣きながら走り去る少女の姿が見え、そして消えていった。私は何が起きたのか分からずに、立ち尽くしていた。

副社長が赤くなった頬をさすりながら、踵を返す。そして顔を上げ、私の存在に気付いた。

「見てた?」

さほど気にしたようでもなくそう言った。まるで、見ていようが、いまいが関係ないといった感じだ。

「はい、見てました」

素直に見たことを告げても、案の定「ふーん」という乾いた返事しか返ってかなかった。

「たった二回寝ただけなのに、別のコと寝たって話聞いて叩くんだもんな。あいつ可笑しいよ」

――え?

私にはどう考えても副社長が可笑しいとしか思えなかった。たった二回って、それは付き合ってたってことではないのだろうか。私は口を開きっぱなしにしたまま、副社長を見上げた。ケラケラと笑い声をあげる副社長の姿がそこにはあった。

いつまでも見上げている私を不審に思ったのか、副社長は首を傾げて尋ねてきた。

「どうした? 俺の顔になんかついてる?」

私は怒りで震えるてを握り締めて言ってやった。

「手形……ついてます」

――こんな遊び人な副社長って……聞いた事ない。

そして私は、怒りと混乱の果て、またもやその場に倒れ込んだ。

「えぇ?! りん!! しっかりしろっ」

遠くの方で、そんな叫び声が聞こえたような気がした。
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