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Only you……番外編
第17章 病院の外は

「しっかりしろっ、先生呼ぼうか」

僕がナースコールに手を伸ばすと、寸前で貴正が制した。僕は驚いてその瞳を凝視した。

「もう、いい、よ」

浅く激しい呼吸の合間を縫って、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。貴正の冷たい手が、僕の手に繋がれる。

「透、真が、看とって……?」

そんな我侭は、聞きたくなかった。まるでこれが最期みたいな物言い。僕は首を左右に振って拒否した。

貴正の悲しそうな顔。僕の胸は締め付けられる。

「傍に、いてよ……」

そんな切なそうな顔で言われたら、僕は断れない。貴正に甘いのは自覚するほどなんだから。

苦しそうに胸を掴んでいた手をゆっくりと解き、代わりに僕の耳を寄せる。貴正の心臓は、異常なリズムで脈打っていた。

「私はっ、まだ、生きてる、の?」

「あぁ、大丈夫だ! 僕が死なせはしないよ!」

「う、ん」

紫色になってきた唇をくっと上げ、貴正は笑った。

僕はきつく貴正を抱きしめた。細くなった体、薄い胸板、白い肌に残った温もりを全て放さないように。

「手紙……」

貴正が口を開いたので顔を上げる。口をパクパクさせながら何かを言った。

「3番目に、あるから」

「手紙……?」

「渡して」

「ヒッ」と引きつった声を漏らし、貴正は喉をおさえた。――否、おさえようとした。しかし手に力が入らないのか、ぴくりと痙攣しただけだった。乾いた空気を吸い込む音が部屋に木霊していた。

「う、ぐっ……はぁっ!!」

激しくうめきながらも貴正は僕の髪に触れ、そして頬に手を伸ばし、空を切った。“キスして欲しい”の合図。それももう送れなくなったのか。

今口付ければ貴正を窒息させるかもしれない。僕は不安に貴正を見つめた。

涙を浮かべこっちを見る瞳に、僕は意を決っして唇を寄せた。

「ん、っぅ――!!」

押し当てるだけの唇。感じるのは柔らかさと、冷たさ。痙攣が僕にまで伝わってきた。
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