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恋のリサーチ
第1章 突然・・


私の仕事はデパ地下での販売。

担当している売り場はなんと乾物コーナー。

海苔だとか干しシイタケだとか

高級昆布なんかを年寄り相手に売っている。

私自身が乾きものなら売っている物も乾き物、なんて

皮肉以外の何物でもない。

おまけにお客も結構な乾き具合だし。


楽しい事とかうきうきした気分だとかには

とんとご無沙汰している。


だから、小説なんて書いたりしているのだ。

小説っていっても、要は

妄想を文章にしているだけ、みたいなもの。

こういう男に出会ってこういう恋をして、とか

こんな男に強引に奪われたい、とか。

上出来な妄想が思い浮かんだ時、

それをまた後で思いおこしたくて、

でも忘れちゃったりするから、だから

文字にして取っておくのだ。

それを勝手に小説、と呼んでいるだけだ。


毎朝、職場からほんの2分くらいの場所にある、

チェーン店のカフェで時間を過ごす。

出勤時間は9時半なのに、

私ときたら8時45分にはこのカフェに

つくように家を出ている。

そして20分くらい、コーヒーを飲みながら

妄想する。

9時5分には店を出て、

20分という余裕の時間を持ってタイムカードを押す。

制服に着替え、始業時間までまだ10分もあるっていうのに

売り場に行って支度を始める。


毎日毎日、おんなじ時間におんなじ行動。

それが私の一日の始まりなのだ。


だから今日みたいに、

いつもの時間にするべきことをしないと、

これからの一日の動きがすべてくるってしまうような気がして、

落ち着かなくなってしまうのだ。

神経質?

どちらかといえばそうなのだろう。

そういう性格だからこそ、

今の状況があるのだろう・・

一応自覚はしているのだが、

なかなか変えることができないでいた。



9時45分、朝礼とともに今日が始まった。

店が開いてから閉まるまで、

乾いた物を乾いた女が乾いた客に売り、

深く頭を下げる。

何度も何度も。


つまらない、一日の時間が

無駄に過ぎていく・・・
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