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顧みすれば~真の愛~
第32章 失われた時を
私は勝手口を潜った。



板場では夜のお座敷に向けて


慌ただしく準備が進められている。


しばらくその光景を眺めていた。



ここに足を踏み入れるのは


何年ぶりだろう。



庭を掃除していた仲居頭が私に気付いた。


「紗英さん

 お帰りなさい」


にっこりと微笑む。


「ただいま 淑子さん」


「女将さんなら

 帳場にいらっしゃいますよ」


そう言って私を案内してくれた。


ここの人はみんなそうだ。

何があっても

どんなに時間を空けても

いつも変わらない挨拶をしてくれる。

まるで昨日も会ったような。



「女将さん

 紗英さんがおもどりですよ」


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