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トラワレテ…
第7章 氾濫
腕の中にすっぽり収まる、

この華奢な女のどこに

そんな力が秘められていたのか…。



俺の世界はユリという女によって変わってしまった。



ドレスを返しに行った彼女を待つ間、

馨はほんの数分のユリの不在に

ガマンならない自分自身に驚いていた。



出来ることなら…

ずっと、

自分の腕の中にユリを閉じ込めてしまいたい。

誰の目にも触れさせず

ただただずっと…

二人抱きあい、見つめ合って、笑いあって…



彼は知ってしまったのだ…。

恋をすると切なくて

愛を知ると苦しい事を…。



誰かの不在に、こんなにも不安定になる自分を…。



見つけてしまったのだ

誰も代わりを出来ない、唯一無二の存在を…



それは、

彼女を失うかもしれない恐怖に

今後ずっと囚われるという事…。



甘い幸福は、

その姿の隠れた深部に恐怖の種を密かに育む。





ふと、ユリの入っていった店に目を遣る。

ガラス越しに見える彼女は輝いていた。



ある事を思いつき、

車を降りると隣のフラワーショップへ入った。



「すみません。バラを一輪…

包装も何もいらないので、そのままで…。」


「かしこまりました。お色は…?どちらに?

色や本数によって色々意味があるんですよ。

愛に関するなら…赤がオススメですね。」


花言葉の意味を聞き、礼を言って隣の店に入る。



ショーケースの中を、覗く彼女の姿。


驚く顔が見たくて、そっと近づいた。



はやく抱き締めたくてたまらない…。



ユリがオーナーと話し込んでいる隙に、

近くにいた店員にショーケースの中の物をラッピングして、バラを挿すよう頼んだ。



「こっそり彼女に渡してくれる?」






大きな瞳をキラキラさせながら、

プレゼントの礼を言う彼女。



ガマン出来ずに、お仕置きと称して唇を奪う。


挿しこんだ舌はユリのそれを探し求め、

上顎を撫で奥から彼女の舌を絡めとる…。

舌と共に、ユリの甘い唾液を吸い上げると

馨の下腹部に熱ともに甘い痺れがあつまる。




涙を流し、馨の愛の言葉に答えるユリを抱き、


このまま今すぐに押し倒してしまいたい衝動を

必死で抑え、家路へ向かった。
















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