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例えば、こんな...
第8章 女子高生と先生と #1
「以上、気を付けて帰れよ」
連絡事項を伝え終え、教壇を降りた。
一気に騒がしくなる教室。荷物を手に駆け出して行く者、友人と話し出す者、様々だ。
「先生さようなら」
「おぅ、さようなら」
パタパタと女子の集団が横を駆け抜けて行った。

職員室に寄って名簿を片付ける。数人の教師と言葉を交わし、すぐにソコを後にした。残っているとろくな目に遭わない。
科学部員の溜まり場になってる化学準備室を覗くと金場が一人で薬品棚に向かっていた。
「早いな」
「先生、こんにちは」
「隣にいるから、火を使った実験とか許可した事以外にやりたい事があったら呼んで?」
「はい」
頭を下げた金場に頷いて、隣の教員室に入った。無駄に綺麗好きな佐伯先生のお陰で、今日もキチッと片付いている。
コーヒーメーカーをセットして、窓から隣の校舎に視線を投げた。

い、た……

図書室の入り口から一番離れた長机の端。壁を作るように隣の椅子に荷物を置いて、参考書を広げる生徒。
河合真純。
その後ろ姿を確認して自然と口角が上がる。
この春高校三年にして、転校してきた彼女は四月からほぼ毎日そこに座っている。いつも、一人で。
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