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例えば、こんな...
第3章 御礼
鉛筆が紙の上を滑るカツカツという音だけが響く教室。
みんな机に向かい、期末試験に取り組んでいる。
はず……よね?

拓真くんがこっち向いてる気がするのは何で?

まだ試験が始まって十分も経ってない。まさか、もう終わったとか?
つい気になって視線を向けたらバチッと目が合ってしまった。
ニコッと笑い掛けられて、不覚にもときめいてしまう。

駄目、でしょう?

軽く睨み付けてみても効果なし。それどころかチョイチョイと手招きされてしまった。

な、何?

にこやかな微笑みに顔が熱くなる。幸いみんな下を向いているから、気付かれはしないけど。
気持ちを落ち着けようと、窓の外に視線を流して深呼吸。なのに左の頬にジリジリと視線を感じる、気がする。

……もう
気になるよ……

一応カンニングしてないか、見て回らないと、ね。

自分に言い訳しながら、机の間をゆっくり歩いて回った。順番に拓真くんの横を通り抜けようとして、音をたてずに答案用紙を示された。

『今日終わったらデートして下さい』

……っ!

急いで視線を上に向け、早歩きしたい気持ちを必死に抑えた。熱くて顔から火が出そう。
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