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例えば、こんな...
第3章 御礼
なっ何で、今?
後でメールしてくれてもいいんじゃない?

一番後ろに着いて怪しまれないようそろそろと深呼吸。何とか気持ちを落ち着かせてから、巡回を再開させた。
教壇まで戻って教室を振り返る。拓真くんは何事もなかったかのように答案用紙に向かっていて

ホント、何でメールじゃないの?

余計に困惑する。

でもその後も巡回するたびにメッセージは書き換えられていて

『佐伯先生、今日からサッカー部ですよね?』
『畠山先生は職員室で採点するらしいですけど』
『山下先生は自宅で採点する派だと聞きました』
『河合先生も今日は自宅で採点して下さいね』
『ご飯作って待ってます』
勝手に話を進められてしまった。

……確かに、拓真くんは試験勉強、私はその準備と戻ってきた答案用紙の採点に追われ、最近全然会えてない。

この後会える、と思うと心がほんわり暖かい。
自然と口元が綻んで

いけない、まだみんな試験中

キュッと口角を引き締めた。
気持ちも一緒に引き締めてクルリと全体を見渡した……のに、優しく微笑む拓真くんと目が合って、溶けてしまいそう。

ず、ズルいよ……
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