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例えば、こんな...
第3章 御礼
拓真くんはなかなか離してくれなくて、ようやく解かれた時には私はすっかり息があがってた。
立ってるの、辛い。
抗議しようと涙目のまま見上げたのに、私を見下ろす拓真くんの喉が鳴る。その目に危険を感じて、急いで身を引いた。
「もう!まだ手も洗ってないのに」
「洗ったら続けて良いですか?」
「駄目です!」
逃げるように洗面所へ向かっても、当然の様に付いてくる。
顔を上気させたまま手を洗う私の後ろから、お腹に腕を回して擦り寄ってきた。

ヤだ、ドキドキする……

「こら、うがい出来ないでしょう?」
「出来ますよ。俺避けますから」
そんな、鏡越しにニッコリ笑われても
「……やだ」
「どうしてですか?」
「嫌なものはイヤなの。ね、向こうで待ってて?」
頼み込む私に
「……分かりました」
渋々感満載で拓真くんが腕を離してくれた。
「ご飯作ってます」
そう言って部屋へ戻っていく。
一人残されて、私は洗面台を握り締めたままその場に崩れるように座り込んだ。

だ、め……身体、熱い

キスで焚き付けられて火照る身体。冷たい床が気持ち良い。でもあまり時間を掛けると拓真くんがきっと覗きに来てしまう。
はぁと息を吐いて立ち上がった。

家に上げたのは最大のミス。なんて、今さら

キス一つでこんなにも乱される
私、今日大丈夫、かな……保てる自信ない、よ

卒業して欲しくないけど、して欲しい

その時を思ってまた一つ息を吐いた。


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