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暁闇
第5章  終わらせる決意


「……背中、押したわけじゃない」


ぼつりと、呟くように俺は口にする。


「桜井が振られればいいって、ほんとに俺……思ってた。先輩が、拒絶してくれればいいって。
そして、もう先輩を諦めざるを得ないように……そんなふうにあいつを追いつめたかった」

「村上さん……」

「想いを終わらせなきゃ、先になんて進めない。はっきり、だめならだめって分かった方がいいんだ。でなきゃ他に目を向けることもできない
……曖昧な状態なんて絶対苦しすぎる」


そんなつらい想い……桜井にもうさせたくなかった。
俺にしがみつくようにして、泣いた彼女。
身動きが取れないほどのその想いに、どうしたらいいのかわからなくなっていて。
もう、見ていられなかった。

桜井が言えないなら俺が代わりに言う。
そして桜井の想いを受け入れてもらえなかったそのときは、もう一度。
……もう一度、桜井を俺のこの腕に。
そのときは絶対離さない。

――そう、思っていたんだ。

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