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HOTEL・LOVE
第12章 晴樹の憂鬱

探るように見ていたが、どちらかから

声をかけることはなかった。

同じエレベーターに乗っていたことに

気づいていないのか。

いや、河井が乗り込んできた時、

一瞬だがこちらを見たのを

たしかに見た。

気がついても必要以上に話しかけない・・

それが鉄則、みたいなものなのか・・


相澤と並んで歩いていると、

廊下に設置されている自販機の前で河井が立ち止り、

なにかを買おうと財布を取り出していた。



「おはよう」



相澤はオレにしたのとまったく変わらない声色で

河井に挨拶をした。

顔をあげた河井も、全く普通の表情で・・



「おはようございます」



そう一言、交わしただけだった。

この2人の間に、

人の前では決して見せることのできない感情と行為が

なされているなんて、誰も気づきはしない、たぶん・・



「あ、オレも買ってくんで、相澤さん

 先に行っててください」



そう言って河井の次に並んだ。



「おう」



短く返事をしながら、相澤は歩いていった。

河井は缶コーヒーを取り出すと、今来た廊下を戻っていった。


その後ろ姿を見送りながら

あの乱れたベッドを・・

思い出していた・・・
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