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【SS】目が覚めたら…?
第2章 Ⅰ.ハル兄と……
 
 

 ハル兄があたしを連れて外出することに、ナツは何も言わなかった。

 ただ寂しそうな顔をしながらも、嬉しそうな顔をハル兄に向けて、


「いいお正月を」


 その言葉を聞いたハル兄の顔は、苦しそうで…悲しそうで。

 ナツの頭をくしゃりと撫でると、あたしを引き寄せて佐伯家から出た。


 ハル兄の赤いポルシェに乗り込み、ハル兄が運転を始めて佐伯家が遠ざかろうとも、お見送りに家の外に出たナツはずっとずっと手を振っていた。


「別にちょっと出かけるだけなのに。ナツは大げさだな」

「……だが多分、明日の俺は……きっとナツと同じ心境だ」


 あたしにはわからない謎めいた言葉。

 ハル兄は皮肉気な笑いを顔に浮かべると……どんなにしんみりとした表情であろうとも、いつものようにやはり外車を暴走させた。


 新年早々。

 デパートの初売りが明日に控える都心に、人も車も少ないことをいいことに、それはそれは……はい。いつもながらなんですが、首都高……警察に追いかけられながら、どうして大笑いしてさらに速度をあげられるのでしょうか、帝王。


「ど、どうしてもっと安全……」

「俺様の甘い夢が、一秒ごとに消えてなくなるのなら、ここは移動時間は短縮した方がいい。とりあえずすべきことを終らせれば、お前に構ってやるから」


 帝王様の手は、あたしの裾を割り、つつつと太腿の内側をなで上げる。


「ちょ……っ」

「ふぅん? お前今……ノーパンノーブラ?」


 忘れていた。

 今のあたし、お外に出られる格好じゃなかった。


「だったら……こうされると、どうなんだ?」


 片手でハンドルを操りながら、片手であたしの足にある指は付け根をなぞるが、決して秘部には触れようとはしない。

 だから余計に露わな秘部に意識が集まり、触れられないことがもどかしくてたまらなくなる。


 ……あたしをよく知って拓いていく……帝王の卑猥な指使いが脳裏に再生され、かっと体が熱くなった。


 リアルに思い出せるほど、あたしはハル兄から濃厚に愛されているという事実を再認識して。



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