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【SS】目が覚めたら…?
第27章 【ファン感謝】白雪姫 ②小人(ナツ)
 

「しーし……」


 どう見ても、他のナツのような天使とは形容できない外貌だけれど、だけどなにかあたしの記憶に残るこの外貌。


「クロ、しーちゃんだよ、しーしじゃないよっ!!」


「しー……ちゃん?」


 あたしから反応がないのを嫌われたと思ったのか、黒ナツはやがて蹲り、しくしくと泣き始めてしまった。


「ちょ、ちょっと考え事してただけなの。よろしくね、ハナタレナツ」


 あたしは、ハナタレナツを手に乗せ目線の高さに持ち上げた。


 ……重っ。

 腕の筋肉がびりびり震える。


「僕だけ、ハナタレ……」


 しまった。

 黒ナツと言えばよかった。差別されたとまた泣き出してしまうだろうか。


 だがハナタレナツはぱっと顔を輝かせた。


「うん、よろしくね、しーちゃん」


 このナツ、笑えば中々可愛い。

 愛嬌ある顔なだけで、パーツ自体は他ナツと変わりないようだが、なぜに彼だけ違う風貌なのかよくわからない。


「あなたは、なんの担当なの?」


 するとハナタレナツは、もじもじしながらあたしをちょいちょいと小さな手で呼び、近づけたあたしの耳に囁いた。



「……えっち」





「はい?」


「えっち担当。きゃっ」


 ハナタレナツは恥ずかしそうに、またもじもじした。


「クロは、夜伽担当なんだ。だけど相手がいないから、働かないんだよ」


 橙ナツがあたしの反対の手に乗りたがる。


「よ、夜伽……」

「えっちのこと」


 またもやハナタレナツはもじもじして言う。


「相手、いないけど。僕働いていないわけじゃないんだ。ちゃんと腕を磨いているんだよ、ひとりで。僕の指、凄いんだ」


 なんと反応すればいいのか。

 なぜそんな担当が必要なのか。


「クロはおデブだし、働いてないからおやつは食べちゃ駄目なんだ。だから僕が作ったクロの分は、力持ちの橙が食べるんだよ」


 赤ナツが説明する。最初から6等分にしないというところに、このナツに対する愛情は少しはあるのかもしれない。



「しー、ちゃん……うふふ」


 言葉のひとつひとつ噛みしめるようにあたしの名前を告げて、ぽっと顔を赤らめるハナタレナツ。

 他のナツに比べればどこか"不出来"。だからこそ、このナツを愛おしく思えて、あたしも知らず知らず、笑みを零した。

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