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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
 

「大丈夫、"あの時"とは外観も内観も変えてあります。今はただ、白薔薇が美しく鑑賞出来る屋敷として、機能させています」

 淡々と告げるその声の深みに、ざわざわとなにか騒ぎ出していたあたしの心は、落ち着きを取り戻す。

 冷ややかにあたしを拒む表情とは裏腹に、ゆったりと、落ち着き払った玲瓏な声が、不思議とあたしの心に温かく染み渡る。


「しばらくはこちらにいて下さい。ここは俺以外、誰もきませんから。だから安全です」


 それでも、まだ男が信用出来ないあたしは。

 男優位で進められていることに、なにか悔しく思うあたしは。


「どうして安全だといいきれるの?」


 男の言葉を素直には受け取れない。


「同じ敷地内、追手が絶対にこないといいきれないのに」

「きたとしても、俺があなたを守ります」


 その迷いない毅然とした態度が、あたしを苛立たせた。

 そんな自信があるのなら、あたしを城から出して貰いたかった、と。

 口だけで転がされるのは、まっぴら御免だ。そんなものが通用する愚かしい姫だと思われたくなくて、皮肉めいて笑って見せる。


「どうやって? 貴方は沢山の追手を蹴散らせるだけの剣の腕や力があるのかしら」

 すらりとした体躯は、服越しとはいえ、鍛え抜かれたような逞しさは見られない。まだ城で内務をしているといわれた方がしっくりくる。


 そんな男が軽々しく「守る」なんて――。


 ちり…。


 脳裏の"なにか"が刺激される。
 

――姫、お守りします。今度こそ、だから姫……。


 なにかの声が蘇生して、思わずあたしが顔を歪めさせた時、男が言った。


「守れる力が……ないように見えますか」


 噛みしめるようにゆっくりと、最後に自嘲的な笑いを付け加えて。
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