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天使の恋 〜桃〜
第1章 出会い
「桃ちゃん今日もかわいいね~」
とお尻を叩く店長に、
「セクハラ!風紀!反対!」
と返して階段を駆け上がる。

私はこの小さな街の小さなキャバクラ「angel」で働くキャバ嬢。

年は19歳、店では一番年下だけど、16歳の時から年をごまかして働いているから、一番のベテランだ。

自分で言うのもなんだけど、小柄、真っ白な肌、つやつやの黒髪、大きな目。
いわゆる男ウケ抜群の容姿に、見た目にぴったりの、甘えた声。

モテる資質は備わっている。

ふつうに生まれて、ふつうに育って、商社マンとかと結婚なんかしちゃえば、絵に描いたようなかわいい奥さんになれていたかもしれない。

でも、私は基本的に男の人がキライだ。

理由は長くなるからいいとして、毎日サエない男たちの相手をするのは苦行に近いのだけれど、どういうわけかこれが天職らしくて、サエない男たちのおかげで、なかなかのお給料を稼がせてもらっている。

***

金曜の夜、最初に入ってきたあの人を見て、すごくかっこいいと、単純に思った。

切れ長の目に高い鼻。
笑うと顔がくしゃっとなる。

「桃ちゃんって言うの?かわいいね!」

団体で来ていた彼は職人さんらしく、作業着を着ていたけれど、不潔さは一切感じなかった。

「うれしー!お兄さんは?お名前は?」

「俺、翔平」
「翔平くん、じゃ翔ちゃんね」
客にあだ名を付けるのは距離を近づける一番簡単なテクニック。

「あはは、なんか幼稚園の先生みたいだね」
と翔ちゃんは笑う。
「そう?」
「うん、桃ちゃん、俺の娘の保育園の先生に話し方がそっくり」
「えー娘さんがいるのー?じゃあお兄さんじゃなくておじさんだねぇ」

まじで、まさかの既婚者。

太い客にはならなそうだけど、一応小さい会社の取締役らしいし、話してて不快ではないし、引っ張っておくか。

それにしても、まあまあかっこいいのに、何で結婚なんて急いじゃうんだろう。

適当に話を盛り上げて、時々ボディタッチなんかしていたら、あっさり場内指名をもらってしまった。

ほら、男って単純。

「また来てくれる…よね?」
お見送りの時に、彼の服の裾を引っ張って、上目遣いで聞く。

「すごいテクニックだね、今の!」
と笑われ、
「また来るよ、気が向いたら!」
と極上の笑顔で返される。

いい客を捕まえたーー

その時はそう思っていた。
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