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衝動[完]
第5章 思い

「せんせ……。」


「見れば解るでしょ?今取り込み中だから。」


祐は弥生に一瞥もくれず、受話器を取った。



「うん、待ってるよ。」


「待ってたって駄目。もう休み時間終わるよ。教室に戻りなさい。」


アドレス帳を見ながら電話をかける。


弥生は寒気に震えながら言葉を続ける。



「でも……あのね……せんせ……。」


「弥生。これはオレの仕事だから。邪魔しないでね。」



「邪魔?……私……祐先生の邪魔してたの…?」


「あ、もしもし?」


祐は電話口に出た相手と話しながら振り返り、漸く弥生を見た。

眉をひそめる。


一礼して出て行く弥生のその顔はいつものような生気が無く、青白く辛そうに歪められていた。



「ちょ、ちょっと待って下さい。すみません。」


そう告げると、受話器に手を当て廊下に向かって叫んだ。


「弥生!弥生!!ちょっと待て!!」


けれどその声は弥生には届かず、祐は舌打ちをすると再び受話器を耳に当てた。


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