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甘いだけの嘘ならいらない
第10章 泣き虫な君には甘いだけの嘘を
結局、あたしは北条部長の想いに応えられなかった。
もう名前も呼ばない。
砕けた話し方もしないし、もちろんキスだってしない。
ふたりっきりになることを避けて、距離を置いて……
あの夜からひと月の間、ずっとそうしてきた。
少しでもはやく、英士くんに償えるように。
少しでもはやく、北条部長を忘れられるように。
こんなふうにタイミング悪く居合わせてしまったけど、もう抱きしめられても、北条部長にどきどきはしても、愛しさは感じなかった。