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甘いだけの嘘ならいらない
第10章 泣き虫な君には甘いだけの嘘を
「……理紗に見られるとは思わなかった」
ばつが悪そうにため息を吐くと、北条部長はあたしに視線を向ける。
髪を撫でて、抱きよせられたら、耳元で囁かれる声。
「もう、名前で呼んでもくれないんだな」
「……ごめん、なさい…」
「何にも告げずに人妻になるだなんて、本当、…ずるいよ」
「ごめ、…なさ……」
「抱きよせても、もう腕も回してこないし、みつめてもキスしようともしないんだな。…英士くんが、そんなに大事なのか?」
北条部長の胸元を押し返して、あたしは俯く。