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甘いだけの嘘ならいらない
第2章 カクテルに浸かる透明な嘘
駅まで向かう途中、お店にハンカチを忘れたことに気づいたあたしは、待っていてもらうのも申し訳ないから先に帰ってもらって、一人でお店に戻った。
お店に戻ると、店員さんが忘れ物に気づいてレジで預かってくれていて、すぐにまた駅に向かおうとした。
お店の外に出ると、すぐ前に立っていた、彼。
「あ……北条部長…」
「女の子一人だと、危ないから。勝手に待ってた」
優しく笑う北条部長に思わずどきりとして、差し出された手に逡巡していると、手をとられて、ぎゅっと抱きよせられる。
一瞬、頭がぼうっとして、動けなくて。
なんで、あたしは北条部長に抱きしめられてるの、とか、どうしてそんなに優しく笑うの、とか、……胸がきゅうっとなるのは、何故なの、とか。
逡巡するあたしに満足したように、北条部長は腰を抱くと、甘く囁くような声を落とした。
「…ふたりで話がしたい。おいで」