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甘いだけの嘘ならいらない
第3章 背徳の恋
赦されない、恋。
あたしは英士くんと婚約してる。
結婚するのはもう決まっているようなもの。
あたしにはそれを拒む理由もなく、それどころか英士くんが今のあたしにはすべてだった。
そもそも、あたしは北条部長のことを何も知らないようなものなのに。
優しい笑顔を向けられるたび、愛しそうにみつめられるたび、胸がふるえた。
瞼の裏に浮かんでは消える、その笑顔に、どうしてこんなに恋い焦がれるの。
だけど触れる前から知っているのは、これはきっと、罪だという事実。
「……そんなに泣きそうな顔されたら、いじめたくなる」
「あの…」
「理紗」
「…っ」
「緊張してるのか?顔が紅いな」
「だって、…だってあたし、」
頭がうまく回ってない。
絡められる指先の熱に、知らない温もりに、どうしたって緊張を解けない。
不意に名前で呼ばれて、いたずらっぽく笑む口元は、瞳は、あたしを捕らえて離そうとしなかった。