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甘いだけの嘘ならいらない
第5章 優しさだけのアイロニー
駅のホームに着いたあたしは、スマホで履歴から英士くんを選んで通話ボタンを押した。
一瞬で繋がった先に、ひどく動揺した声の、彼を感じる。
『理紗?! 理紗……っ』
「英士くん、……ごめんなさい…」
『…理紗、無事なの?どこも怪我したり、怖い目にあったりしてない?いまどこに…っ』
英士くんの、声。
優しくて、だけどいつもよりもずっとせつなそうで、心配と怒りを孕んでいる、愛しい彼の声。
それだけで涙が瞳の奥からこみあげてきて、あたしは息をつまらせた。