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誘淫接続
第7章 解除
 「水野さん、そんなに仮面大事ですか?」
 隆一はスマホの画面を見ている。
 「無理矢理はがしてしまうしかない……だから、僕がそうすることにしたんです」
 「そうすることにした……?」
 「できるだけ、そばにいて」
 麻琴はうつむいたままで目を見開いた。

 麻琴の頭の中を、さまざまな光景がよみがえってきた。
 だんだんと、目の下が熱くなってくる。
 麻琴は固く目を閉じた。
 顔を上げることができなくなった。
 ただただ、下を向き続けていた。

 「……さっき私を助けてくれたのは……偶然ですか……?」
 人波は途絶えることなく、麻琴と隆一の前をずっとずっと流れ続けている。

 麻琴の唇が震え出した。
 その震えは、やがて全身に広がっていった。
 麻琴は両腕を前で交差させ、身体の震えを抑えつけるように自分で自分の上半身を強く抱きしめた。
 眼鏡の奥の麻琴の瞳は潤みを帯びて、頬は紅く上気している。
 「……全部……東さん……だったんですね……」

 貞操帯の責め具が――
 動き出していた。

 隆一は、スマホを上着の内ポケットに入れて、表情ひとつ変えずに前を向いた。
 麻琴は下を向いたまま自分自身を必死に抱きしめ、身体の中で動き回る異物の感触に耐えるように、ふるふると震え続けた。
 「ひどいです……」

 「……こういう風にしか、女の人を愛せないんですよ」
 隆一は、それきり口を閉じた。

 人々は相変わらず、二人の前を行き交い続ける。
 麻琴は、これだけのたくさんの人々を前にしながら、ここにいるのが自分と隆一の二人きりだけのような気がした。
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