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誘淫接続
第2章 第十の接続
 が、隆一は自分からは絶対に学歴や職業の話をしない。麻琴も他の受講生から聞かされただけだ。
 話しぶりも落ち着いていて、聞き上手で、麻琴の方が歳上なのに隆一の方がよっぽど大人に見える。

 しかし麻琴は、隆一の学歴や勤め先など関係なく、優しげな見た目や話しぶりとも関係なく、彼の持つ『強い何か』を秘めている空気感――に惹かれずにいられなかった。
 その『何か』がどういうものなのかを聞かれても、言葉でうまく説明できない。

 一方で、麻琴は一線を越えようとはしなかった。
 いや、できなかった。
 教室のスタッフが受講生と付き合うなど立場的に許されないものだ、と思っている。

 それ以前に、社会に出て間もない年頃の隆一が、あと少しすれば三十という数字も見えてくる歳上を相手にするはずがない――。
 洋服も無難にシンプルなものしか選べず、薄化粧で済ますような地味な女に好意を持つはずがない――。

 彼氏がいたなんて、もう何年前の話だったろう?
 好きな人のために服を選んだり、化粧に時間を掛けたりすることなんて今はない。
 というより、その『やり方を忘れてしまった』感じだ。
 男に『どう抱かれたらいいか』も、忘れた。

 第一。
 職場で、今この瞬間も、股間の二つの穴にバイブを詰め込んだままでいるような変態女なのだから――。
 だから、この想いは自分の胸の中にしまっておくべきなのだ。
 淡い想いを抱いているだけで、麻琴は隆一を汚してしまうような気にさえなる。

 ふと、思う。
 もし。
 もしも。
 麻琴の身体がすでに『普通のセックス』で満足できないようになっていたとしたら――。
 麻琴は一瞬小さく身震いした。
 その時いきなり、教室の隅から女性の叫び声が聞こえてきた。
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