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誘淫接続
第4章 切断
 いや――
 本当は、『ご主人様』の機嫌を損ねて、嫌われてしまうことを恐れたのでは?
 妄想に溺れさせてくれるこの関係を失うことを恐れたのでは?

 麻琴はすぐさまその考えを否定した。
 違う。
 いつだってやめられる。
 『虚構』なんだから。
 そんなこと恐れてはいない。

 だから、麻琴は『ご主人様』に余計なことは言わなかった。
 ほめられたことを素直に喜んでさえ見せた。
 そして、いつも通り貞操帯を解錠してもらい、チャットを切った。
 しかしその日以降、『ご主人様』からの連絡が、途絶えた。



 一日二日連絡が来ないことなどはこれまでに何度もあった。だから麻琴も最初は気づかなかった。
 ところが四日も五日も連絡が来ないあたりから、おかしいと思い始めた。

 やはり、嫌われたのだろうか?
 あの日、『ご主人様』の機嫌を損なうようなことを言っただろうか?
 『お仕置き』はちゃんと実行した。
 その時の恐怖を訴えることもしなかった。
 『ご主人様』は麻琴をほめてチャットを終えたのだ。

 公園から自宅に帰る間、スマホの電源を切ったことがまずかったのだろうか?
 その時点で、『ご主人様』は麻琴との関係を断つことにしたのではないだろうか?
 いや、電源を切ったことを責めるなら、自宅に帰った時点で真っ先に麻琴を責めるはずだ。
 思い当たるふしはない。
 麻琴は待つことにした。

 しかし、一週間が過ぎると、麻琴の中に徐々に焦りのようなものが芽生え始めた。
 メールを出しても、チャットアプリで呼びかけても、何の返事もなかった。
 麻琴はいら立った。
 そして時おり冷静になると、返事がないことにいら立っている自分にいら立った。
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