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誘淫接続
第4章 切断
 それからも何度かメールを出し、チャットで呼びかけた。
 それでも、『ご主人様』からは何の反応もなかった。

 麻琴はいら立っている自分にとまどいもした。
 たかだかネット上だけの関係だった相手がいきなり音信不通になったところで、そんなものに執着するような性格ではなかったはずだ。

 精神的に疲れているだけかも知れない。
 そのために感情が不安定になっているだけかも知れない。
 別に構わないではないか。しょせんネット上の『虚構』だったのだから。
 いら立つ方がおかしい。焦る必要もない。何も失ってはいない――

 そのはずなのに、いら立ちはなかなか消えなかった。
 仕事場でも、気がつけば放心していることがあった。
 自分でも信じられないような失敗もした。

 『あのっ……発送の伝票の、その、宛先間違ってますけど……』まさかあの翠に指摘されるとは思わなかった。
 『別にいつも色っぽい顔見せろとは言わないよお、でも地味通り越して老け込んじゃってるよ』松戸にすら覚めた目で見られた。
 隆一からは『誘い』の言葉どころか、ひと言も声を掛けられない。避けられている気にさえなる。

 そんなにも麻琴はあからさまにおかしくなっているのだろうか?
 麻琴の気分はますます沈んだ。
 どうしてここまで影響されるのだろう――?
 どうしてここまで気分が不安定になるのだろう――?

    ※  ※  ※

 昨晩にいたっては仕事で体も疲れているはずなのに、麻琴は全然寝つけなかった。
 代わりに――
 身体がうずき始めた。
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