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誘淫接続
第4章 切断
 座らずに、歩いてみることで自宅ではない場所で責められていた時のことを『身体』が思い出すのではないか――
 あの強烈な快楽をもう一度味わえるのではないか――
 そう考えて、少し酔った頭で麻琴は部屋の中を歩き続けていた。

 ところが――
 身体が多少高ぶってはくるものの、激しい快感にはほど遠いままだ。
 歩けば、穴の中の淫具はそれに合わせてわずかにずれる。
 肉芽に当たる突起も同じだ。
 その小さな刺激が麻琴の内側にある性感を揺さぶりはするし、少し顔もほてってくる。
 それでも、麻琴の欲する渦にはならない。せいぜい波紋程度だ。
 目をつむり、責められていた時の情景を脳内に必死に呼び起こそうとしても、火種は炎にはならず火種のままだ。

 その時、スマホの着信音が部屋中に響いた。
 麻琴は驚きで身体をびくつかせた。
 ――ご主人さま……!?
 いや、スマホの音は電話の着信音だ。『ご主人様』であるはずがない。
 それは分かり切っているのに、真っ先に『ご主人様』という言葉が頭をよぎった自分に、麻琴は小さくため息をついた。

 スマホの画面には『お母さん』という文字が表示されている。
 麻琴はベッドの端に座り、電話に出た。
 母の声は相変わらず明るい笑い声だ。中高生のころは、脳天気とも思える母のそのしゃべり方がたまらなく嫌だったこともあった。

 大人になって全く気にならなくなったが、今だけは、母の声が体内の淫具の感触とぶつかり合い、これ以上ない居心地悪さを次々と産み出してくる。
 母は立て板に水で次々言葉をたたみかけてきた。
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