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サイドストーリー3
第15章 キスマーク
このところ優衣の仕事の忙しさが半端ない。
俺より忙しいって相当だぞ。

今日もデートをドタキャンされた。

俺は仕方なく、二人で行くはずだった優衣の会社の近くのワインバーに寄った。
久しぶりにマスターとワインの味について話し合うのも悪くない。

そう思って店に入ると顔見知りのボーイが
「ゲンさん。あれ」と奥のカウンターを指差した。
「優衣?」

そこには優衣と、仕事上がりからそのまま流れてきたのか
若い男と一緒だった。

若干なれなれしい男の振る舞いに、遠くからでも優衣が嫌がっているのが分かる。
「あいつ、俺との約束キャンセルして何やってんだよ」
「助けに行かないでいいんですか?」
「仕事がらみだろ?様子見るわ。ありがと」

肩を抱かれ、苦笑いしながら手をどけた。
相手の膝が優衣の膝についた。

おいおい。店で大胆なヤローだな。

テーブルの上の手を握られた。

「はーっ」

いくら何でもそこまでだ。
俺は大きなため息とともに席を立った。

「優衣」
「しずか!」

助かったという安堵の表情と、変なところを見られたという困惑の表情が一体となった。
「優衣は?仕事帰り?」
「うん。こちら、丸田商事の内野さん」

ああ、丸田か。どこかで見た事がある男だと思った。

「横浜ホールディングの広報部加藤です。優衣がお世話になっています」
これ見よがしに優衣の肩を抱く。
社会人の挨拶としてはサイテーだな。

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