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サイドストーリー3
第26章 嘘つきは恋の始まり
金曜日。
近頃やっと作ってもらった合い鍵を握り締めて
野口さんの家に行く。

週末はすっかりこっちで過ごすようになって
部屋着も何枚か置きっぱなしだ。

一緒にDVDを見ようって約束したのに「ごめん。遅くなる」って
メールが来て。
「やっぱりね」って、わざわざ声に出してみたけど
自分で本当に納得した訳じゃない。

忙しいのは同じ会社だからよく分かってる。
よく分かってるから、文句は言えない。
素直に、文句の一つも言えれば楽なのに。

それでもぎりぎりまで待って。
終電がなくなった時間に、1つの大きなため息とともに諦めた。
お風呂に入って寝よう。

こんなに遅いんだったらご飯も食べてるだろう。
作った夕飯にラップをして、
面白くもないテレビを消す。

リビングの電気は付けたままで
お風呂に入っていい香りの入浴剤を入れた。

「いいよ。この匂いに癒されるから」

ポツッと言った一言に、涙も一粒流れた。

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