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サイドストーリー3
第29章 恋心あれば水心③
山田さんが私を大事にしてくれているのは痛いほど良く分かるから。
「じゃぁ、終電で帰る」
「あぁ。ごめんな」
「ううん」

もちろん山田さん自身が彼女である私の父と気まずくなるのも嫌だろうけど
それ以前に、私と父の関係を考えてくれているんだと思う。
ありがとう。

「はい。山田さん。これプレゼント」
そう言ってプレゼントを渡す私をじっと見つめる。
「なに?」
「のぞみさ、俺の名前知ってる?」
「え!知ってるよ!」
「山田、じゃないよ。下の名前」
「知ってるよ・・・」
「じゃぁ、誕生日ぐらい名前で呼んでよ」

そういって再び後ろから、耳たぶを噛んだ。

「たかゆ・・・んっ」
「はっきり言って」
「たかゆ・・き」

「ん。これからプライベートは名前で呼んで」

そう言ったけど、のぞみちゃんの『山田さん』は直らず。
まぁ、良いか。と思う。

近い将来、のぞみも『山田』だから。
そうしたら、俺の事はなんて呼ぶんだろうな?
楽しみだ。

俺は俺の名前がなんだかとっても特別なものに思えた誕生日だった。

END*****


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