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白い飛沫(しぶき)
第9章  理恵その二
夏が過ぎ去り、秋が訪れた。

理恵は壁にかかったカレンダーの○印をつけた数字を見つめ、深いため息をついた。

『もうすぐなのね、神さまってひどい・・・私はまだ順也に思いを告げていないというのに。』

夏休みの最終日に両親から渡米の話を聞かされた。
父の仕事の関係で数年はアメリカで暮らさねばならないという。

理恵は一人で日本に残り、中学生活だけはこのまま過ごしたいと懇願した。
が、中一なんてまだまだ子供だからと受け入れてはもらえなかった。

2学期が始まっても順也との関係は余所余所しいままだ。

『このまま、さよならなんてイヤ。・・思いだけは順也に告げよう。』

両親は今週の土曜日、友人宅に招かれているとかで留守にすると言っていた。

「土曜日・・・順也を家に呼ぼう。そして、せめて思いだけは告げよう・・・。」


土曜日、部活が終了後、部室から着替えを終えた順也をつかまえ、声をかけた。

「順也くん。これからよければ、家に来てもらえる?」

「これから?・・・別にいいけど。」

「ありがとう。よかった・・・」
来てくれることに期待はしてなかったが予想に反して良い返事をもらえた。。

もしも、都合が悪いと断られたら、誰に聞かれてもいい今この場で告白するつもりだった。

帰宅中も順也との会話は弾まなかった。
問いかけに「ああ」とか「うん、そう。」とかのつれない返事・・

涙が出そうになった。
こんなにも順也が好きなのに、こんなにも順也のそばにいるのに・・・

順也の心の中に私はいない・・・

告白して『ごめん、他に好きな子がいるんだ』と言われてもいい。
日本を離れる前に思いだけはきっちりと告げておきたい。

でないと私は前に進めない。ずっと中1のまま虚しい人生を送ってしまいそうだもの。
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