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ピンクの扉
第2章  セールスマン
今朝、主人が札幌へ飛び立った。

しばらく会えなくなるので、しょげ返っている私と相反して、札幌はビールが旨いだろうなあ、
とか、ラーメンをたらふく食ってやる、とか、ススキノにも行ってみないとなあなどと結構ルンルン気分で飛行場へ向かった。


はあ~、切ない・・・

今から後を追いかけてやろうかしら。
ダメダメ、しっかりと留守をまもらないと。
がんばるのよ、桃子。

とは言っても、やはり主人のいない毎日は寂しかった。

毎晩、電話で話してみても、通話を終えた後はしばらく涙が止まらなかった。

娘の由佳は父親の目が届かないのをいいことに、帰宅時間も遅く、毎晩のように友人と遊び歩いた。
何度注意しても、まるでどこ吹く風といった感じであった。


そんなある日のこと。
私はいつものように、朝から掃除、洗濯をさっさと片付け、一人で昼食を済まし、一段落したところでのんびりとテレビに向かい、午後のワイドショーをぼんやりと見ていた。

”ピンポーン”
来客を告げるインターホンが鳴り響いた。

はい、どちらさまでしょうか?

「こんにちは、奥様でいらいっしゃいますでしょうか?」

はあ・・・そうですけど?

「午後のおくつろぎのところ、突然のご訪問、まことに失礼いたします。
わたくし、XXXゴムのアドバイザーをしております今口と申します。よろしくお願いいたします。
さて、本日ご訪問させていただいたのはですねえ・・・」

こちらに口を挟む暇を与えずに一気にしゃべり始めた。

でも、意外と煩わしくなかった。

おそらく主人と離れて、人と接する事に飢えていたのかもしれない。
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