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want to be ...
第29章 素直な気持ち 雫SIDE
時間差で入ってきた瑞季が、あたしが泣いてるのを見て呆れてティッシュの箱を渡してくれる。
ぐっちゃぐちゃだろうな、あたしの顔…
さっきから持ったままのハンカチで涙を拭い、ティッシュを数枚取り出して鼻をかむ。
…と、ゴミ箱まで差し出してくれて、その中にティッシュを丸めて捨てた。
鼻水が出なくなるまで鼻をかみ、嗚咽も治まって瑞季を見上げると。
あたしを優しい瞳で見ていて…そのまま、ゆっくり近付いてきて抱き締められた。
「雫…っ」
絞り出すように呟かれたあたしの名前。
すん、と鼻を啜って瞬きをし、恐る恐る瑞季の背中に腕を回す。
すると、ぎゅうっと力強く抱き締められて、頬に瑞季の髪が触れた。
「…好きだよ、雫。大好き…」
「…」
しばらく、瞬きを繰り返していた。
ぇ…?
好…き?
大好き…?
再び静かに流れる涙。
「やっと言える。やっと胸張って好きだって言える」
「どうしても、お前の事離してやれない」
「お前がいないと生きていけない…」
「お前を失わずに済んで、よかった…」
震えてる瑞季の体。
震えてる声…
この人は、冗談でそんな事を言う人じゃない。
いつだってストイックで、自分の感情に正直な人。
だから離れてる間、不安だった。
面と向かってでしか感情をぶつけてくれないから…