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あの店に彼がいるそうです
第9章 俺は戦力外ですか
「さて、お待ちかねの集計結果発表だ。今月は本当に大変だったな」
 閉店して、俺と三嗣が急いで掃除を終えてから全員が集まった。
 まだ息の切れているまま、輪の外側で話を聞く。
 隣に一夜がやってきた。
「お疲れ」
「ありがと……はあっはあ」
 三嗣は俺の反対側に。
 ここに千夏がいないのが少し寂しいが、彼は類沢の右にいた。
 半円の中央に。
 けだるそうにアカも立っている。
 髪の色ですぐどこにいるかわかる。
「今月のNo.5までを先に発表する」
 気が張り詰める。
 店の入り口に飾られた写真。
 あの五枚の中に、入るため。
 きっと三嗣も一夜もそれを目標に頑張っている。
 俺だけ蚊帳の外。
「トップは雅だ。お前ら少しは追い付いてやれ。断トツだぞ」
「そう」
 興味なさそうに類沢が応じる。
 彼の後ろに並ぶホスト達の眼の色が変わった。
 尊敬の眼差し。
 ほら。
 俺のついている人はやはり凄い、って。
 この期待に毎回答えるプレッシャーってどのくらいなんだろう。
「次は紅乃木だ。よく引っ張ってくれたな」
「どうも~」
 類沢以外には直接給与が渡されるようだ。
 分厚い封筒を受け取ってアカが微笑む。
 今夜は派閥全員で飲みに行くと聞いた。
 彼の奢りで。
「そして千夏。新規の客が増えたな。その調子で頼む」
「わかりました」
 静かに受け取るその瞳は憂いを帯びている。
 一夜が俺に耳打ちした。
「毎月紅乃木打倒を宣言しているから、辛いんだ」
「でもトップスリーなんだろ」
「入った時から紅乃木とライバルなんだよ。まだ一度も勝ってない」
 二人が話しているのを見たことがないのはそれか。
 お互いをなんて呼んでいるんだろう。
「晃、もう少しで落ちるところだったぞ」
 不機嫌な顔をした晃が封筒を奪い取る。
 それを見て篠田が首を振った。
 だが、それ以上は引き止めない。
「五番手は愛だ。追い上げてるな」
 輪の中に動揺が走る。
 誰だろう、愛って。
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