この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
あの店に彼がいるそうです
第9章 俺は戦力外ですか

 スッと輪の外から回って前に出てきた細身の男。
 歳は二十後半だろうか。
 大人びた落ち着いた雰囲気。
 頭のラインに沿うようなストレートの黒髪。
 女性のボブのように耳元で切り揃えているのが、妙に存在に合っている。
「あいつ本当に№に入りやがった」
「晃が抜かれんのか」
「浩はなにしてんだよ」
 ざわめきが断片的に聞こえる。
 話題の人物なんだろう。
 篠田が目を細めて給与を差し出す。
「維持するのは大変だぞ」
「まだ上り続けますよ」
 不敵に笑んで、類沢を一瞥する。
 その一重の眼が氷のように凍てついた。
 なんて目で見るんだ。
 殺気すら感じられる眼光。
 類沢がどんな顔をしているかここからは見られないが、あの二人の間には入りたくない。
「愛ってだれ?」
 一夜に尋ねたが、彼も驚きから抜けられていないようで茫然と頷いただけだった。
 あとで類沢さんに聞こう。
「今月は新入りが二人入った。瑞希に拓だ。虐めんなよ、お前ら」
 一斉に視線が向く。
 背筋が冷たくなった。
 色んな感情を交えた眼。
 左後方にいた拓が俺の隣に歩み寄る。
 がっと肩を掴むと、大きな声で朗らかに言った。
「キャッスルにいる親友に負けないように頑張らせてもらいますー。先輩方よろしく」
 晃の顔があからさまに歪んだ気がした。
 初めて拓の顔を見た者も多いはずなのに、全員が会釈した。
 仕事仲間だと認めるように。
「元気が取り柄の野郎だ。お前は言いたいことないのか」
 篠田がアイコンタクトする。
 緊張で喉が痛い。
 いうこと。
 いうこと……
 なんだ。
 えっと。
 目線を感じて顔を上げると、類沢がまっすぐに俺を見ていた。
 いつもと違う。
 いや、初めて会ったときと同じかもしれない。
 試す眼。
 何を言うの、瑞希。
 そう投げかけて。
 黙ってちゃダメだ。
 息を吸う。
「俺は……」
 頭が真っ白になる。
 何を言おうとしてたんだっけ。
 ああ。
 考えてなかった。
 みんなが見ている。
 なら、言わなきゃ。

「俺は類沢さんのところに行きます」

 凍った空気の中で、類沢だけが笑った。
/342ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ